編者からのメッセージ
五味 文彦 先生
著者:橋場 弦 先生
 歴史という教科を学ぶ中学生が、日本だけではなく世界の歩みをも平易に理解できるような教科書をつくるのは、専門家にも難しい作業です。
 歴史を学ぶ意味は、私たちとちがう時代や地域に生きた人々に出会うことをとおして、自分自身を理解することにあります。それは必ずしも外国の人々とは限りません。日本列島の歴史を振り返っても、そこには今日の私たちからみても異質な、さまざまな文化や価値観をもった人々が生きていました。また日本列島に住む人々は、古代から周辺の東アジア世界の影響を深く受け、のちには欧米諸国を模範として近代化への道を歩みました。
 自国のことしか知らない人は、その自国のこともじつはよく理解していない、といわれます。この教科書では、世界の歴史からみた日本の位置をわかりやすく説明するようにつとめました。
 グローバル化の進んだ現在の世界は、地域紛争や格差の拡大、地球環境の破壊など、さまざまな問題に直面しています。世界がどのようにして今日のような姿になったのか、その諸問題がどのような背景から生じてきたのかを、この教科書からぜひ学びとって欲しいと願っています。
編者からのメッセージ
佐藤 信 先生
著者:桜井 英治 先生
 私たちは、大人の入り口に立つ中学生のみなさんに、ぜひ歴史的なモノの見方や考え方を身につけてほしいと願っています。今の私たちの生活や技術は一朝一夕にできたわけではなく、何世代にもわたる先人たちの努力や試行錯誤の積み重ねにほかなりません。このごく当たり前の事実に思いをはせて欲しいのです。また、人類は成功ばかりでなく、多くの失敗も繰り返してきました。現代に繋がることなく滅んでいった文明もたくさんあります。そのような失敗や滅亡の原因を考えることも大切な勉強でしょう。
 一方、美しい自然や限りある資源は今生きている私たちだけのものではなく、まだ生まれてきていない未来の世代のものでもあります。過去と未来の双方を見通すことで、私たち一人一人の人生も長い人類史の一部であることを知るでしょう。それは、これから大人になり、社会を背負ってゆく中学生にとって、とても大事な経験です。私たちは、この教科書をとおしてその瞬間によりそいたいと考えています。
 高校では、近現代史を中心に講じられる「歴史総合」という新しい科目も待っています。そのときにあわてないためにも、私たちの教科書で前近代史からしっかりと学び、さらに「日本史探究」「世界史探究」を学ぶ際に役立つ思考力のベースを、身につけてほしいと思います。