今や，ますます歴史から学ぶことの重要性が高まっています。2011 年，東日本を襲った地震と津波から，歴史を学ぶ意味を再認識された方はきっと多いことでしょう。一瞬にして生命と財産を奪ったこの大震災に立ち向かうためには，過去の歴史から学ぶことが極めて多いことがわかりました。
先人が苦難を乗り越えて築いてきた歴史の動きをきちんと捉えて知ることは，これから生きてゆく上で大きな力となるでしょう。政治や経済，文化などあらゆる領域でなしてきた先人の活動が，今の，これからの，我々に生きてゆく力をあたえてくれることでしょう。
この教科書では，歴史を学ぶ意味を考え，基本的な事実を提供することについてはもちろん，その事実の背景をなす社会的諸関係をきちんと提示することに努めました。これまでの教科書の実績に基づきつつも，それに安住せず，さらによりよい教科書を目指して編集しました。皆様の期待にきっとこたえるものと考えています。

東日本大震災や変化の激しい最近の世界情勢，そして日本社会が直面する停滞状況にみられるように，私たちをとりまく世界や生活の全場面において，これからの将来像に明るい見通しを描くことが困難になってきています。こうした今日の時代だからこそ，改めて日本史をしっかりと見直すことが求められているものと思います。
こうした中で，『詳説日本史』では，近年進展した日本史の新しい研究状況や成果をふまえ，また教育現場から寄せられた質問や指摘を十分参考にして，さらにいっそうの正確さとわかりやすさを深めるための内容の充実を図っています。
全体を通じて，従来の記述を細かく丹念に見直し，文章としての正確さ・わかりやすさを追求して，さらに教育現場からの指摘にも答える努力を傾けた次第です。これまでに増して信頼度が高く魅力的な日本史教科書となることをめざした，新しい『詳説日本史』が，教育現場で十分に活用されることを願っています。